5回目となる「福井翻訳ミステリー読書会」は、第3回、第4回に続きオンラインにて2020年10月31日(土)に開催いたしました。
またもすっかり遅くなってしまいましたが、今回も簡単なレポートを記しておきたいと思います。
課題書は『弁護士ダニエル・ローリンズ』ヴィクター・メソス 著/関 麻衣子 訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ゲストに翻訳者の関麻衣子さんをお迎えする事ができ、定員12名で募集を開始したところ、一日経たないうちに満席となり、当初の予定から4名追加しての開催となり盛り上がりました!
さて、当日は先に実施したアンケートの内容についてお聞きしたりしながら、ザクっと参加者の皆さんから感想をお聞かせいただいたので、その一部をご紹介いたします。
・主人公のダニエルの設定が絶妙。
・2016年の作品だけれど、今のアメリカを象徴しているかのよう。
・意外に重い物語だった。
・主人公の相棒キャラ、ウィルが好き。
・ユーモラスでありながら自虐的なところが好き。
・ダニエルという主人公が魅力的でグイグイ読ませる。
・アメリカの司法制度がよく分からなくて、物語に書かれているような事は本当にあるのかと疑問に思った。
・女性が強い物語で面白い。
・犯人はもっと早い時点で分かっても良かったのでは。
・違う結末の方が良かった。
・主人公の周りにはいい人が集まっているなど、白黒はっきりしている印象。
・最後は出来過ぎかとも思う。
・物語のために障がい者を被害者にする設定はあまり好きじゃなかった。
・米ドラマの「アリー my Love」に設定が似ている。
・根深い黒人差別など社会的問題について考えさせられた。
・ダニエルとテディが一緒に過ごした時間が、より信じる事に繋がったのでは。
・ダニエルのイメージは日本の俳優だと篠原涼子。
・最初、主人公は男かと思ったぐらい、ダニエルが男前。
・裁判の行方は意表をつかれた。
・リーガルものが好きなのでツボだった。
・今年の上半期で読んだ中では1,2を争うぐらい好き。
などなど、皆さんから色々な感想や意見をいただいた中で、やはり主人公のダニエルというキャラクターが魅力的なのと、ダニエルの周りの登場人物もまた魅力的という点について皆さん意見が一致していたようです。
なお、翻訳者の関さんはジェットコースターのように喜んだり悲しんだりしながら読んだそうで、原書でも泣いて、訳しながらも泣いて、ゲラを読んでも泣いてと、何度も涙しながら読んだけど、参加者の皆さんの感想を聞いてこんなに泣いてるのは自分だけじゃないのかと、小さくショックを受けておられました(笑)。
一通り皆さんの感想を聞いた後はダニエルの元夫であるステファンと、ダニエルの調査員でありダニエルの事を想っているウィルについてどちらが魅力的だったりするのかも話題に。
ステファンは普通にいい人で特にダメ男ではないけけど魅力的でも無く、狂言回し的な役割だと身も蓋も無く評価されたり、一方のウィルに関してもいい男かも知れなけどロマンス的要素は本書に必要なのか疑問という声もありつつ、そもそもダニエルに男を見る目が無いんじゃないかなんて意見も上がっていました(笑)。
そんな中で株が上がったのはダニエルとステファン、二人の間の息子ジャックというのが面白かったですね。
確かに、ジャックという存在があったからこそダニエルが正義を貫く決意を得る事が出来ましたし、うん、確かにいい子だ(笑)。
また、ダニエルに何かとマウント仕掛けてくるステファンの婚約者ペイトンについて。
彼女のキャラクターの個性が強すぎてステファンの存在感が薄れているとの声もあり、時間があればダニエルvsペイトンの場面についてなど、もっと掘り下げて話をしてみたかったところです(笑)。
さて、本書はこの作品のみで完結し、シリーズものではないのが残念という意見も多かったです。
それはやはり、バツイチで元夫に未練たらたら、二日酔いで法廷に入ったりするほどの酔いどれな主人公ダニエルは、突拍子もない行動を取ったりするもするけれど、お人好しでで正義感が強い存在として魅力的な人物として描かれている事。
そして、読んでみると根底に流れているテーマは重くとも、ユーモラスな語り口で読みやすいところもその理由としてあるのではないでしょうか。
ユーモア部分を面白く訳せているのか、そして読者が面白がって読んでくれるか心配だったと関さんは仰っていましたが、それは全くの杞憂で、読みながらつい笑ってしまったという読者も多いかと思います。
そのユーモア部分、ぶっとんだエピソードがいくつもあって、その辺も含めて話題は尽き無さそうでしたが、皆さんと語り合う時間が無くなってしまって残念。
実際、予定よりも30分ほど長く開催いたしましたが、参加者の皆さんもまだまだ語りたいと思う事があったかと思います。
この辺りは進行役の力量不足と反省(汗)。
機会があれば語り足りなかった部分もお話しできればと思いますので、その時はどうぞよろしくお願いいたします。
ちなみに今回、参加者16名のうち、福井在住が6名で、他は、兵庫県2名、埼玉県2名、静岡県2名、その他、愛知県、岐阜県、大阪府、東京都からそれぞれ1名ずつご参加頂きました。
ダメ元で翻訳者の関さんにご参加をお願いしたところ快諾して頂けたり、全国各地からこうやって多くの方にご参加頂けたりするのはオンラインならではですね。
リアルでの開催が難しい状況は続いていますが、画面越しとはいえこうやって沢山の方に出会え、そして楽しい時間を過ごす事ができる事を感謝しております。
ところで本書のエピローグについて、関さんから訳すにあたって少し工夫された点があったとお聞きする事ができました(この点についてはネタバレになるので記す事は出来ませんが)。
そのエピローグ、少々甘くて不要だという方もいれば、ロマンチックで好きだと言う方も。
そんなエピローグも含めて、今の時代だからこそ沢山の方に読んでもらいたいと思える作品です。
未読の方は是非お手に取ってみて下さい!
※電子書籍版もあります
※関麻衣子さん訳の〈完全探偵エイモス・デッカー〉シリーズ。シリーズの続きを・・・!
※読書会の中でも話題に上がった映像作品